ある日納車から帰ると見慣れた色のミニが置いてあります。
工場にいたN君に聞くと
『オーバーヒートみたいです』
とのこと。
ラジエータキャップを外して暖気を始めると2〜3分で
『ゴッブォッ』
という感じで大きな気泡が上がってきます。
『ああ、ヘッド抜けだ』
もう一度N君に聞くと、
『オーバーヒートしたみたいなんで水を足しながら乗ってきたと言っていらしゃいました。』
乗ってこずにすぐ連絡くださいよ・・・とどめが刺さってしまいますよ・・・
さて、とりあえずサーモスタットを外してみると見えるところに水がありません。
ヘッドガスケットが抜けて、燃焼室とウオータージャケットが通じて、排ガスで水が追い出されているんでしょう。
もう、とりあえずヘッドを降ろさないことには始まりません。
ラジエータ、マニホールド、オルタネータを外し、エアコンコンプレッサーを上に釣り上げます。
そうして、ヘッドカバーを外し、後でヘッドだけにしやすいようロッカーアームも緩めておきます。
とりあえずヘッドがおりたのでまず原因を調べてみましょう。
ヘッドガスケットに吹き抜けた跡が見えます。
何らかの理由でヘッドとガスケットの間が空いてしまい密着の悪くなったところから水の通路へ向けて排ガスが吹き抜けていたようです。
メタルリングが赤色の範囲の部分、茶色になってますね。
ここを排ガスが通っていた証拠です。
何らかの原因って、ミニはヘッドもブロックも鋳鉄なのですが、工作精度の低さからか面の仕上げが粗いのでヘッド面・ブロック面ともガスやら液体がじわじわ浸食していって今回のようなことにつながっているのかと思います。
まあ、今回エンジンブロックを降ろすわけにはいかないので、ブロック面ヘッド面共に手磨き研磨してもう少し良い状態にして組み立てます。
矢印の黒いところが冷却水で侵食されています。
2番と3番のあいだなんて、燃焼室の間も黒くなってますね。
先程のガスケット画像と重ねて考えると、スチールリングだけでやっと気密を保っていたのがわかります。
ブロック側もしつこくみがいて、黒いところもだいぶ薄くなって手で触る分には段差もわからなくなったんで今回は良しとします。
ヘッドのスタッドボルトも規定トルクよりちょっと上で締め込めたのでボルト穴も良い状態だと思います。(ミニのヘッドボルトって、規定トルクだと緩むらしいです。今回も2本緩いところがありました。)
オイルで手を汚していると、肝心なところの写真撮ってないんですよね。
このあと組み上がり、トップの写真になります。(実はあれ、組み上げ後の写真です)
念を入れてエア抜き、試乗、冷やしてまたエア抜き・・・と繰り返し水が減らないのを確認してご納車しました。
3週間ぶりくらいに待ちわびていらっしゃったオーナー様にお渡ししました。
なにごともありませんように・・・
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